WAKUWAKU JAPAN

WAKUWAKU JAPAN：クールジャパン政策と海外展開の試みと挫折

2014年から2022年まで、スカパーJSATグループが運営していた「WAKUWAKU JAPAN」は、日本国外向けに日本のテレビ番組を放送する専門チャンネルでした。アジアを中心に10の国と地域で展開され、日本のドラマ、アニメ、紀行番組などを、現地語字幕付きで放送することで、海外への日本文化発信と、観光促進、ひいては経済効果を期待する試みでした。

事業概要と背景

「WAKUWAKU JAPAN」は、現地在住の日本人ではなく、現地の視聴者層をターゲットにした点が特徴です。番組編成にあたり、事前の視聴者調査を実施。特に人気が高かったのはドラマ、アニメ、紀行番組でした。番組内容は、日本の放送局が制作した番組に加え、現地制作のオリジナル番組も含まれていました。

日本の国策である「クールジャパン」戦略とも深く関連しており、日本の文化や魅力を海外に発信し、観光客誘致や経済効果の創出を目指していました。そのため、2015年には官民ファンドであるクールジャパン機構から44億円の出資を受けました。スカパーJSATは、アジアでの視聴可能世帯数を約2000万世帯と見込んでいましたが、結果的には数十億円の損失を計上し、2022年3月末に放送を終了しました。

開局から終了までの経緯

2014年1月30日、インドネシアでの開局を発表。当初は2020年までにサービスエリアを32カ国に拡大する計画でした。その後、シンガポール、ミャンマー、スリランカ、台湾、モンゴル、ベトナム、タイ、フィリピンへとサービスエリアを拡大していきました。

2015年には、クールジャパン機構からの出資を受け、WAKUWAKU JAPAN株式会社が設立され、スカパーJSATから事業が譲渡されました。しかし、積極的なプロモーション活動にも関わらず、黒字化には至りませんでした。2018年度には10億円を超える、2019年度には6億円を超える損失を計上し、2020年にはスカパーJSATに吸収合併されました。それでも収益は上がらず、最終的に2022年3月末をもって放送を終了しました。

放送内容の特徴

放送番組は、日本のドラマや映画、アニメなどが中心でした。「あまちゃん」「おしん」「ごちそうさん」といった人気ドラマは、特にアジアで高い人気を誇り、再放送が繰り返されるほどでした。

クールジャパン機構の関与もあり、日本の国策に沿ったオリジナル番組も制作されました。「日本の優れた作品」として認定された番組や、外国人留学生による日本各地の大学紹介番組などが放送されました。また、日本の農業の魅力を発信し、アジアからの農業従事者誘致を目指す紀行番組なども制作されました。

事業の失敗要因

「WAKUWAKU JAPAN」の失敗要因としては、視聴者数の伸び悩みや、事業規模に見合わないコスト構造、収益化モデルの不確実性などが考えられます。当初見込んでいた視聴者数に届かず、多額の赤字を計上したことが、事業終了の大きな原因となりました。クールジャパン政策との連携は、事業推進において大きな役割を果たしましたが、必ずしも経済的成功を保証するものではなかったと言えるでしょう。

まとめ

「WAKUWAKU JAPAN」は、日本のコンテンツを海外に発信する試みとして注目を集め、クールジャパン政策とも深く関わった事業でした。しかし、多額の赤字を計上し、放送終了という結果に終わりました。この事例は、海外展開における課題や、クールジャパン政策の成功と失敗について考える上で貴重な教訓となるでしょう。今後、同様の事業を行う際には、市場調査の徹底、綿密な事業計画、現実的な収益化モデルの構築が不可欠です。

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